社長の部屋CEO's ROOM

03.随想編

上原良司陸軍大尉

2015.05.11

 この連休で家族と知覧特攻平和会館を訪れた。特攻で散った二十歳前後の若者と私が同世代だった頃、時代は極端に左傾化していて特攻など語ることは憚られた。しかし、私にはずっとどのような思いで若者が死んでいったのか見届けてあげねばと気になっていた。やっとその心の重荷が下ろせた気持ちだ。
訪問当日は連休で列に並んで入館する有り様で、館内はとてもジックリと多くの遺書を読んだりする環境ではなかった。並べられた遺品と遺書、遺影はその数に一つ一つの命の無念さを感じた。ある人は自分を騙し昂揚感を作り、ある人は静々と冷静に時代と環境を見つめながらこの世を去って行ったのが窺い知れた。
 先を急ぎ知覧を車で去り始めたとき、ふと特攻隊員たちの最後の人間らしい交流の場になったという、特攻の母鳥浜トメが経営していた「冨家食堂」のことが気になり、引き返した。今は「ホタル館」という名で当時のままに再建されていた。ここには冷静に遺品遺書が並べられた特攻平和会館と違って、小規模だが鳥浜トメと死に臨んだ若者の交流の記録が残されていて、多くの生々しい生き様、死に様に接することが出来た。
 17歳で逝った子犬好きの若者、朝鮮出身で食堂でアリランを一緒に歌い最後は朝鮮語で涙流して歌った若者。死んだらホタルになって帰ってくるといって去り、約束通りホタルが帰ってきたというホタル館の名の由来の若者。同じ島に不時着した重傷の戦友パイロットを救う為に、島の人達の制止も聞かず命がけで70kmの海を島の若者と二人小船で九州本土に戻り、そのまま飛行機に薬を積んで特攻に向かい途上で薬を小落下傘で島に落としていった若者もいた。   「走れメロス」を思いだした。メロスは救われ友情に涙したが、このパイロットは友の命を救うために死んだ。しかし、この救われたパイロットは生き残り、戦後何度も知覧と島を訪れたという。
思わず涙せずには読めない若者の最期の話の数々の中に、一人異色の学徒動員出身の士官上原良司少尉(死後に大尉)のエピソードに気持ちを奪われた。私は強く心惹かれ、この大尉の名前をせめて供養と思ってフルネームで覚えて帰ることにした。帰って調べると「きけわだつみの声」などで名前は有名な特攻隊員らしい。
 自らを自由主義者といい、ファシズムもナチズムも負けたように自由主義が勝利し日本は負けると書き残し、

「愛する祖国日本をして、かつての大英帝国のごとき大帝国たらしめんとする私の野望はついに空しくなりました。……愛する恋人に死なれた時、自分も一緒に精神的には死んでおりました。
天国に待ちある人、天国において彼女と会えると思うと、死は天国に行く途中でしかありませんから何でもありません。
明日は出撃です。過激にわたり、もちろん発表すべき事ではありませんでしたが、偽らぬ心境は以上述べたごとくです。
…明日は自由主義者が一人この世から去って行きます。彼の後姿は淋しいですが、心中満足で一杯です。言いたい事を言いたいだけ言いました。無礼をお許し下さい。ではこの辺で」

と陸軍報道班員に「所感」を求められるがまま書き残して、堂々と自分の生きざまを主張し自由主義者として空に消えていった。

 上原大尉には心に秘めた恋人がいて、そのころ既に他の人と結婚し結核で亡くなっていたという。彼の実家にひそかに遺された自由主義者羽仁五郎の著作の本文に丸囲いの文字があった。それを並べると

「きょうこちゃん、さやうなら。僕は きみが すきだつた
しかし そのときすでに きみは こんやくの人であつた わたしは くるしんだ。そして きみの こうフクを かんがえたとき あいのことばをささやくことを だンネンした しかし わたしは いつもきみを あいしている」

と読めるという。

 今日5月11日は奇しくも上原良司大尉の70回忌。1945年の今日、上原良司という、「死んだら靖国神社にはいかない天国に行く」と言っていた22歳の若者が沖縄嘉手納沖の米国機動部隊目がけて知覧を飛び立っていった。

 もし、時間あるときあれば「上原良司」をネットでいい、調べて見てもらいたい。70年前の軍国主義と呼ばれる暗い時代に、今の若者より遥かに柔軟な思想をもって自由に憧れながら自由と独立の為に死ぬといい、死んでいった軍人がいたことを知ることは価値あることだと思う。
彼の死は無駄だったのか……。私には分からないが、私一人でも彼の名前を憶えていてあげたいと思う。合掌

2015年5月11日

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