社長の部屋CEO's ROOM

03.随想編

ベクトル的幸福論

2021.11.22

 子供の頃、人間は生まれながらに平等である、と聴いた。人の能力は誰も同じと小学校の先生も言っていた。そして素直な子供の気持ちで受け入れようとするのと、では運動会では明らかに私は後ろから走っているは何故だろうと思ったものだ。私が根性無しであるだけなのかとも考えた。

 勿論、大人になってとっくにその考えは捨てた。明らかに人には能力の差があり、生まれ環境の裕福さも容姿も恵まれたり不運だったりあると誰もが知る社会である。

 

 しかし、幸福感はこの座標位置とは全く違う。幸福感とはグラフで云えば変化の角度と大きさだと感じるようになった。即ちベクトルの違いだ。むしろ低い位置にいたほうが大きな上昇を得やすい。どんなに高い位置にいてもベクトルが下方を向いていては、その恵まれた環境での幸せ感を得るのは難しいのではなかろうか。

 そういった点では私は恵まれていた。生まれて間もない頃、家庭の事情で極貧を味わった。正に赤貧洗うが如しである。農業であった為、食べることだけは出来たが経済社会から見放されたような生活が数年あった。そこが私の記憶が始まる原点と言える。だからそれ以後は貧しくてもベクトルは上を向いていたので幸福感があった。やがて人並程度の経済生活に追いつくと家庭にも上昇感は無くなった。無事と平和が当たり前となった。ささやかなものを手に入れることへの喜びや、むかし、一年に何度か街で家族一緒にささやかな食事するときの幸福感なども無くなった。寂しい時代だ。

 

 50年以上前かもしれない、“一つ一つ、家庭電化はママの夢”というキャッチコピーがあった。電力会社だっただろうか。確かに多くの日本の家庭にぴったりだった。一生懸命働いて家に電気冷蔵庫が来た。夏に氷を家で食べることが出来るなど昭和30年代の夢だった。これを味わった世代が幸福なのか、冷蔵庫もクーラーも生まれた時からあるのが当たり前の世代が幸福なのか…、私にはわからない。ただ、3Cと言われる車、クーラー、カラーTVのような製品が家庭に笑顔を運んでくるような商品が今後も続くのだろうか。カラーTVも最初の白黒TVが来た時の感動に比べれば色褪せる。

 4,5歳の頃、一つの卵を味噌汁にゆでて貰いそれを妹と半分に分け、更に取り出してその半分を昼まで残して醤油をかけて食べた。貧しい中ではそれもご馳走だった。家に小学校2年生の時テレビが来た。その時の嬉しさは忘れない。学校から帰れば家にTVがある、このワクワク感こそ代えがたい幸福感だ。大きくなって車を買った時の何倍もの幸福感があった。

 中国人のある友人は子供の頃が文化大革命の嵐だったので、腹が減って土さえ食べたことがあると言った。流石に私の経験さえ遥かに超える。この友がもしその頃の思い出を持ち続けているなら、私よりずっと今の日々への幸福感は大きいかもしれない。私も雨の日に雨漏りがしない幸福感を大切にしたい。今の世代に雨漏りを経験した人はいないだろうが、昔は雨が降ると家の中であちらこちらに洗面器やバケツを置いた。大雨になると雨漏り箇所も量も増えタライさえ引っ張り出されたものだ。雨が降っても家の中で何もしなくてTVを見ていていい幸福感を、昨年ミャンマーに行った時に思いす機会があった。道の横に並ぶスラム街があった。雨は多分、日本より激しい雨も降るだろうに、どの様な対策しているのかと思ってしまった。私には経験があるから想像できる。この人たちの厳しさを共感できることに感謝する気分になった。雨は家の外に降るものと思うだろうが、家の中にも雨は降るものだ。雨の日の煮炊きの竈は大変だった。ガスなどまだない遠い過去の時代の記憶だ。

 ガスが普及する前に我が家には石油コンロが来た。好きな時に簡単に火が起こせる文明の利器だった。登山やキャンプで使うコンロの大型のものだ。

 貧乏くさい話だが。幸福感とは今の自分が立つ位置が上に上がるときに感じ、高い位置にいても降りる時には失うもののようだ。健康も経済も同じだ。だから、そういった視点から改めて人は平等なのだと感じる。私はその視点からはずっと幸福感で生きて来た。不味いから食べたくないと思うこともほとんどないし、持っているものを失っていく人生でもなかった。ただ、今からは今持っている体力や知力を失っていくのだろうが、知力を失うことでその喪失感は薄らいでいくのかもしれない。これも神が与えた幸福感なのか…。

 

2020.7.19記す

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